再受験医師の社説比較

医学部再受験し、地方国立大学を卒業した精神科医です。 毎日全国紙の社説を比較します。多面的な見方を養い、幅広い知識をつけることを目標にしています。 勉強の手段としてAnkiというアプリを使用しており、これに転記できるようなQ&Aを付け加えています。

【社説比較】東日本大震災から10年

各紙の比較

 4紙すべてが東日本大震災をとりあげた。10年の節目であり、外せないテーマなのだろう。

 

 4紙の着眼点は少しずつ異なるので、比較していきたい。全体的に、復興そのものよりも今後の防災に重点が置かれているような印象を受ける。

 

 

 

東日本大震災10年

 読売は、住宅や道路といったハード面の復興がほぼ終了したことを評価している。『防潮堤の建設や造成した高台への集団移転などの複合的な対策によって、被災地で暮らす人々の安全性は格段に高まった』のは歓迎すべきことだ。

 

 また、『震災を機に、全国の自治体がハザードマップや避難計画の策定などを進めてきた』ことも、震災のプラスの影響といえるだろう。

 

 いっぽうで、『多くの被災地で、住民が避難先から戻らず、造成地に空き地が広がっている』。その一因として、『当時の民主党内閣は、復興事業費の全額を国費で賄う措置を取った』ことが、『事業内容の吟味が甘くなり、肥大化につながった』と民主党政権を批判した。

 

 また、『災害の発生直後は、生活再建に追われる被災者が街づくりに異を唱えることは難しい。かといって、合意を尊重して復興に時間をかけすぎれば、避難先から戻れなくなる人が増えてしまう』というジレンマがあるため、住民の意向と行政側の事業計画にミスマッチが生まれやすい。

 

 このジレンマを解消するには、『自治体と住民が平時から復興のあり方を話し合う「事前復興」の取り組み』が望ましい『被害想定を踏まえ、被災した場合の街づくりの方向性を定め、指揮命令系統や手順を決めておく』わけだ。

 

 最後に福島県の厳しい現状が紹介されている。原発廃炉について『溶融燃料を取り出す作業は思うように進まず、処理水の海洋放出は風評被害への懸念から、実施の見通しが立っていない』。『国はロボットなどの研究施設を沿岸部に集積』する方針で資金を投じているが、『地域の雇用に結びついているとは言い難い』。

 

 

 朝日は、具体例を紹介しつつ「事前復興」の必要性を訴えた。

 

 『石巻市雄勝(おがつ)地区』では、高台移転や防波堤整備をめぐって住民の意見が割れた。最終的には市の意向が通され、高台移転と防波堤整備の両方が実施された。

 

 『「まちづくり協議会」』の『副会長だった高橋頼雄さん(53)は「住民の話し合いの場のはずが、役所が決めたことを認めさせる場になってしまった」』といい、『「これはめざした復興ではない」』と悔やんでいる。

 

 いっぽう気仙沼市では、住民の意向を取り入れて防波堤建設計画が一部変更された。当初県は高さ6メートル余の防波堤建設を計画したが、住民団体の『「防潮堤を勉強する会」』は『海が見えなくなる怖さ』を訴えた。

 

 震災3年後まで競技した結果、『堤の上部を可動式にすることで高さは2メートル低くなり、海への視界も守られた』。朝日は、震災前からの『市民参加のまちづくり』や住民運動の蓄積が、防波堤計画でも住民と市が対話する土台になったと評価している。

 

 『実際に災害が起きたらどう対処するかを、住民と自治体が協力してあらかじめ計画しておく「事前復興」』の取り組みは、災害後の住民と行政のすれちがいを減らす一助になりそうだ。

 

 

 毎日は、住民の帰還が進まない現状を紹介し、人のつながりが必要だと訴えている。

 

 政府は、帰還の進まない自治体の人口を増やすために『新年度から原発周辺の12市町村に移住する人に対して最大200万円を支給する事業を始める』。

 

 毎日はこの施策に懐疑的だ。福島県葛尾村の移住者のコメントでは、『村の基幹産業である農業の技術』を『移住者ら若い世代に伝える機会をつくり、伝統をつなぐことが大事だと考えている』という。ただ人を増やせばよいわけではないということだろう。

 

 また、福島にロボット計画などの拠点を作る『国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」』に対して『地元の人の関心は薄い。自分の仕事や生活との関わりが見えてこないからだ』。

 

 毎日は『新たな人や産業を呼び込んでも、新旧の住民が一緒になってまちの再生に取り組む仕組みがなければ、震災前とは断絶した全く別のまちになりかねない』と結論づけている。

 

 納得できるが、その後に紹介した「人のつながり」の例は、避難者が『会の仲間らと地元の小中学校の校歌の合唱を練習し、福島を訪れて地域の祭りで披露した』ことだ。少し主題からズレている気がする。

 

 

 産経は、災害への備えの重要さと風評被害について述べた。

 

 『現在は震災遺構として一般公開されている仙台市立荒浜小学校』では、『震災1年前のチリ地震津波を契機に避難計画を見直し、集合場所を体育館から校舎に変更していた』。

 

 『津波と瓦礫(がれき)は校舎2階まで達したが、320人の避難者は全員、ヘリコプターによる移送などで救助された』。『体育館は津波で大きな被害を受け』ており、集合場所の変更が功を奏した。

 

 もっとも、震災1年前のチリ地震津波そのものは気象庁の予測に反して小規模で、『チリ地震の記憶は、気象庁の警報を軽視し避難行動を鈍らせる要因になった』との一面もある。

 

 産経は、地震などが起こるたびに『災害への備えと命を守る心構えを再確認し、更新するきっかけにすることが大事』と訴えた。

 

 また、「人の営み」の回復について、『福島の復興を妨げている風評被害の根絶は、最も重要な課題の一つ』と強調した。

 

 そして、『社会全体が徹底的に被害者を守りながら、社会の中に潜んでいる風評と差別の芽を摘んでいくことでしか、風評や差別の根絶はできない』として、一人一人の心がけを求めている。

 

 

 

 

Q&A

なし

 

 

 

リンク

読売:

大震災10年 惨禍の教訓を次代につなごう : 社説 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

 

朝日:

(社説)津波被災地の10年 「主役は住民」の理念新たに:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

毎日:

(社説)津波被災地の10年 「主役は住民」の理念新たに:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

産経:

【主張】東日本大震災10年 風化に抗い風評を絶とう - 産経ニュース (sankei.com)

 

 『』内はリンクからの引用です。